02 相続税の概算計算 ツイート シェア

02-03 相続税の計算の仕方

(1)法定相続分で税額を計算

簡単におさらいをすると、プラスの財産に一定の生前贈与をした財産、みなし相続財産を足して遺産総額を算出し、そこからマイナスの財産や非課税財産を引き、相続税の対象となる財産の合計額を算出しました。

さらにそこから基礎控除額を引いて課税遺産総額が算出できました。

最初に、相続税の計算は、課税遺産総額をいったん法定相続分で分けたものと仮定して、相続人ごとに相続財産の取得金額を計算します。

相続人が妻と長男、長女の合計3人(いずれも未成年者、障害者には該当しない)で課税遺産総額が2億円の場合、法定相続の割合で分けると、妻が2分の1の1億円、長男、長女が4分の1ずつで、それぞれ5000万円取得することになります。

この取得価格に相続税の税率表(速算表)を適用して、相続人1人ずつの相続税額を求めます。ここで注意しなければいけないのは、課税遺産総額に税率表を適用するのではなく、課税遺産総額を法定相続分で按分した各人金額に税率表を適用するということです。

相続税の税率は、「超過累進税率」といって、取得価格が5000万円でも、1000万円までは10%、1000万円超~3000万円までは15%、3000万円超~5000万円までが20%と、一定額を超えた部分について、段階的に高い税率が課せられます。

相続税の速算表を使えば、法定相続人ごとの税額の計算が一度にできます。

この例の場合、妻は1億円 × 30% - 700万円 = 2300万円、長男、長女は5000万円 × 20% - 200万円 = 800万円。それぞれに800万円になります。

(2)相続税の総額を算出

相続人1人1人の税額を計算したら、これをすべて足した額が、相続税の総額となります。

この例の場合は、妻:2300万円、長男:800万円、長女:800万円で、相続税の総額が合計3900万円となりました。

(3)各人の相続税額の計算

上記で計算した相続税の総額に対して、相続人1人ずつが実際に取得する遺産額の割合を掛けて、負担する相続税の額を求めます。実際の取得割合は、実際の取得金額/遺産総額となります。

この例の場合の遺産総額は、2億円に基礎控除額4800万円を足して、2億4800万円。これを分母とし、取得割合を出します。

この例では、妻の実際の取得金額は1億6000万円、長男の取得金額が5000万円、長女の取得金額が3800万円として計算します。

妻が負担する相続税額は、3900万円 × 1億6000万円/2億4800万円 = 2516万円。長男が負担する相続税額は、3900万円 × 5000万円/2億4800万円 = 786万円。長女が負担する相続税額は、3900万円 × 3800万円/2億4800万円 = 598万円。

これを合計すると、2516万円 + 786万円 + 598万円 = 3900万円。

(4)各人の納付税額を計算

そして、各相続人の事情に応じて税額控除が受けられる場合は、その分を相続税額から差し引くことができますし、逆に加算されることもあります。

いちばん大きな税額控除が、「配偶者の税額軽減」です。配偶者が取得した遺産の価額が、1億6000万円または法定相続分(上記例では1/2)のどちらか大きい金額までは相続税が課税されません。それを超えた場合には、超えた分に対して相続税がかかってきます。

配偶者は、それまでの被相続人の財産形成を助けてきた場合が多く、被相続人が亡くなったあとの生活を保障するためにも、相続税の課税が軽減されるべきだという配慮から、大幅に税額が軽減されます。

この例の場合、妻は「配偶者の税額軽減」で全額控除となり、2516万円の相続税はゼロになります。

長男の相続税額786万円と長女の相続税額598万円は、税額控除等の適用がないので、そのままの金額となります。相続人2人が納める相続税額は、合計1384万円になりました。

ほかにも、亡くなる前3年以内の贈与や相続時精算課税制度を利用した際に贈与税を納めていれば、贈与税分を相続税から引くことができます。未成年者や障害のある人も、相続税額から一定の控除が受けられます。

一方、配偶者や子ども、親以外の人が遺産を受け取る場合は、実際の取得割合に応じた税額に2割加算した納税額を払わなければなりません。

図解:02-03 相続税の計算

図解:02-03 相続税の計算【相続広場】