02 相続税の概算計算 ツイート シェア

02-02 相続財産の加算項目

(1)3年以内贈与を加算

被相続人(亡くなった人)が亡くなる前の3年以内に贈与した財産は、相続財産に加算することになっています。基礎控除額110万円以下の贈与財産や被相続人が死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。

すでに支払った贈与税は、相続税から控除されます。

(2)相続時精算課税の加算

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母(贈与者)から20歳以上の子または孫(受贈者)へ生前贈与を行う場合に選択できる制度です。
生前に財産を贈与しても、贈与時点では2500万円までは贈与税がかからず、相続発生後に生前贈与された全額を相続財産に加えて、相続税で精算します。

同じ贈与者・受贈者の間なら、2500万円の特別控除額が複数年にわたって使え、2500万円を超える部分には一律20%の贈与税がかかります。

この場合、すでに支払った贈与税額は相続税額から控除され、控除しきれない金額は還付されます。この相続時精算課税制度で贈与した場合は、3年以内の贈与に限らず、これまでの分すべてを相続税で計算し直すことになっています。

注意してもらいたい点は、相続時精算課税制度は、いったん選択すると相続時まで撤回することはできません。その結果、毎年110万円の暦年贈与の非課税枠が使えなくなり、その贈与者からの贈与財産にはすべてこの制度が適用されることになります。
(2)相続時精算課税の加算【相続広場】

(3)結婚や子育て一括贈与の残高を加算

「結婚・子育て資金の一括贈与」は、父母または祖父母(贈与者)から20歳以上50歳未満の子または孫(受贈者)へ、結婚や子育ての資金に充てるためのお金を一括贈与する際に1000万円まで非課税になる制度です。

この契約期間中に贈与者が死亡した場合は、受贈者が管理残額を相続により取得したものとみなされるため、死亡時の財産の残高を相続財産に加算します。

一方で、生前贈与したものでも、相続財産に加算しない部分もあります。

婚姻期間20年以上の夫婦間の住宅資金贈与の特例や、直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の特例で、非課税の適用を受けた金額に関しては、被相続人から生前に贈与を受けたものであっても相続財産に加算されません。

(4)保険金と退職金も加算

亡くなった時点では財産ではありませんが、被相続人の死亡後に受け取ることが決まっている財産を「みなし相続財産」といいます。具体的には、死亡保険金や死亡退職金などを指します。

死亡保険金は、被相続人が契約者でかつ被保険者の場合で、被相続人の死亡によって支払われるものです。その受け取り人が相続人の場合は、「500万円×法定相続人の数」の非課税額を引いた金額を相続財産に加えます。

死亡保険金の受け取り人を法定相続人以外にしておくこともできますが、その場合は、1人あたり500万円の非課税枠が使えません。

死亡退職金は、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。死亡保険金と同様に「500万円×法定相続人の数」が非課税額として引くことができます。

被相続人の死亡により受け取った弔慰金や花輪代等は、原則として相続税の課税対象にはなりません。

ただし、多額の弔慰金は、退職金の一部とみなされ、相続税の課税対象となることがあります。弔慰金の非課税枠は、業務上の死亡である場合は普通給与の3年分相当額、業務上の死亡でない場合は普通給与の半年分相当額となっています。

(5)課税遺産総額も課税

相続税がかかるかどうかを判断するためには、まず、遺産総額を把握する必要があります。遺産総額は、プラスの財産にみなし相続財産、生前贈与をした財産の一部を加えたもの。ここから、マイナスの財産と非課税財産を引きます。

これが相続税の対象となる財産の合計額となります(『02-02 相続財産に加算される項目』参照)。相続税の対象となる財産の合計額から基礎控除額を引くと、課税遺産総額が出ます。

基礎控除額は、ここまでの金額は相続税がかからないという非課税になる範囲で、3000万円+(600万円×法定相続人の数)です。

基礎控除額は、法定相続人の数が多いほど多くなります。たとえば、相続人が配偶者と子ども1人の合計2人なら、4200万円、配偶者と子ども2人の合計3人なら4800万円になります。

相続税の対象となる財産の合計額が基礎控除額より少ない場合は、相続税はかかりません。基礎控除額を引いた残りの課税遺産総額がプラスの場合は、相続税がかかります。