10 相続税Q&A 基礎編 その1 ツイート シェア

10-05 生命保険の取扱いは?

(1)生命保険のメリット

 相続対策としての生命保険の主なメリットは、相続税の非課税枠の活用(税額の軽減)、相続税の納税資金の準備(納税資金として活用)、遺産分割対策(代償分割における代償金として活用)があります。

(2)非課税枠の活用?

被相続人の死亡によって相続人が受け取った生命保険金等のうち、被相続人が負担した保険料に対応する部分は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。

ただし、相続人のその後の生活保障等を考慮して、「500万円×法定相続人の数」が非課税とされています。例えば、法定相続人が妻、長男、長女の3人の場合は、1,500万円(500万円×3人)が非課税となり、この非課税枠を超える金額が課税対象となります。

  具体的な計算例(法定相続人が配偶者、長男、長女の3人の場合)
   ①各人の保険金受取額
   ・配偶者・・・2,000万円
   ・長 男・・・1,000万円
   ・長 女・・・1,000万円
   ・合 計・・・4,000万円
   ②非課税限度額
   500万円×3人=1,500万円
   ③各人の非課税金額
   ・配偶者・・・750万円(1,500万円×2,000万円/4,000万円)
   ・長 男・・・375万円(1,500万円×1,000万円/4,000万円)
   ・長 女・・・375万円(1,500万円×1,000万円/4,000万円)
   ④各人の課税価格に算入される保険金額(①-③)
   ・配偶者・・・1,250万円(2,000万円-750万円)
   ・長 男・・・ 625万円(1,000万円-375万円)
   ・長 女・・・ 625万円(1,000万円-375万円)

(3)保険金の課税関係?

 生命保険金は、その契約者(保険料負担者)、被保険者、保険金受取人の相互の関係によって、下記の例のように相続税、贈与税、所得税のいずれかの対象となります。

 それぞれの課税関係は以下の通りです。

契約関係契約者被保険者保険金
受取人
課税関係
契約者と
被保険者が
同一の場合
本人本人配偶者配偶者に対して
相続税
契約者と
保険金受取人が
同一の場合
本人子に対して
所得税
(+住民税)
契約者と
被保険者が
同一の場合
配偶者本人子に対して
贈与税

(4)納税資金の準備?

 相続財産の大半を不動産が占める場合等は、多額の相続税が不足することがあります。この場合にはすぐには不動産を売却出来るとは限りません。そうすると延納や物納を検討しなければなりませんが、生命保険金があれば、それを納税資金として使うことが出来ます。

 銀行預金等は遺産分割協議が終了するまで現金化することが出来ませんが、生命保険は遺産分割協議終了を待たずに受取人が単独で請求することが出来ます。

(5)保険金を遺産分割に

 相続財産が不動産や自社株式など、分割しにくい財産が多い場合に、特定の相続人が分割しにくい財産を相続する代わりに、他の相続人に対して自分の財産を交付する方法を代償分割といいます。

 この場合において、代償金を支払う相続人にそれ相応の資金が必要となりますが、その相続人を受取人とする生命保険に加入しておくと、その保険金を代償金として他の相続人に現金で支払うことが出来ますので、遺産分割をスムーズに進めることが出来ます。