10 相続税Q&A 基礎編 その1 ツイート シェア

10-04 相続税のかからない財産は?

(1)課税財産を区別?

 原則として、被相続人(亡くなった人)が残したすべての財産について相続税がかかります。ただし、その財産の性質や社会政策的な見地などから相続税を課税することが適当でないものとして非課税とされる財産があります。それでは、相続税の対象となるものと非課税財産について説明しましょう。

(2)課税財産とは?

①相続や遺贈によって取得した財産(本来の相続財産)
 相続人は被相続人のすべての財産や権利を承継します。従って、預貯金、貸付金、不動産、有価証券など、経済的価値のあるすべてのものが対象となります。 
ただし、被相続人の一身に属する権利(例えば、扶養請求権や国家資格など)は相続人に承継されません。
  
②みなし相続財産
 民法上の相続財産とはならないものでも、被相続人の死亡に起因して相続人に支払われる生命保険金などは、実質的に相続により財産を取得したことと同様の経済的効果があるため、みなし相続財産として相続税の課税対象とされます。

 このみなし相続財産の主なものは以下の通りです。
・被相続人の死亡によって取得した生命保険金等のうち、その被相続人が負担した保険料に対応する部分の金額。

・被相続人の死亡によって受け取った退職手当金、功労金等で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの。
なお、被相続人の死亡によって受ける弔慰金や花輪代等については、原則として相続税の課税対象にはなりませんが、次に掲げる金額を超える場合は、その超える部分の金額が相続税の課税対象となります。 
被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき・・・被相続人の死亡時の普通給与の3年分
被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき・・・被相続人の死亡時の普通給与の半年分

・生命保険の個人年金などで被相続人が掛金を負担しており、年金の受取人が被相続人以外である場合。この場合、相続開始時に年金の給付が開始されておりませんが、相続税の課税対象となります。

・信託(財産を信託銀行などに預けて管理、運用してもらうことを信託といいます。)を委託した人以外の人が信託からの利益を受ける場合。

・その他特別の利益を受ける場合。遺言により相続人が自分の借金を肩代わりしてもらった場合や無償又は著しく有利な価格で財産を譲り受けたことにより利益が生じた場合には、その利益に相当する金額が課税対象となります。
 
③3年以内の贈与財産を加算
 相続や遺贈によって財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与により財産を取得した場合には、その贈与を受けた時の価格を相続財産に加算します。
 その場合、贈与を受けた時に支払った贈与税額のうち、その贈与財産に対応する部分の金額は、相続税額から控除されます。

 ただし、次のものに該当する場合は、被相続人から生前に贈与を受けたものであっても相続財産に加算されません。
・居住用不動産(または居住用不動産を取得するための金銭)の贈与を受けて配偶者控除の適用を受けたもののうち、その配偶者控除額に相当する金額
・直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
・直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額

 なお、贈与を受けた時に相続時精算課税制度の適用を受けた場合も、贈与時の価格によって相続財産に加算されます。

(3)非課税財産とは?

 相続や遺贈によって取得した財産の中には、相続税の課税対象とならないものがあります。これを非課税財産といいます。

 この非課税財産の主なものは以下の通りです。
① 墓地、墓石、仏壇、仏具などの日常礼拝をしているもの
② 宗教、慈善、学術その他の公益を目的とする事業を行う人が相続や遺贈によって取得した財産で、その公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
③ 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
④ 上記(2)②のみなし相続財産として課税対象となった生命保険金のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額(法定相続人が3人の場合は、500万円×3人=1,500万円)
⑤ 上記(2)②のみなし相続財産として課税対象となった退職手当金等のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額(法定相続人が3人の場合は、500万円×3人=1,500万円)
⑥ 相続または遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国や地方公共団体などに寄付したもの