03 遺言書と争続防止 ツイート シェア

03-03 公正証書遺言の作成方法

(1) 法的証拠力が高い公正証書遺言

公正証書は法律の専門家が作成する公文書なので、遺言依頼者が自分の意思を確実に残せるだけでなく、遺言者が亡くなったときに家庭裁判所で検認を受ける必要がなく、すぐに遺言の内容を実行することができます。

作成された公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、紛失したり、偽造・変造されたりする心配がありません(遺言者は同一内容の正本を受け取ります)。

遺言書は公証人が書くので形式などの不備で無効になることがなく、遺言の内容についてはあらかじめ公証人と打ち合わせておくことによって、不明確だったり、矛盾があったり、あるいは遺留分を侵害するといったことも防げます。

(2) 証人2人と公正役場へ行って作成する

公正証書遺言は、遺言する人が証人2人とともに公証役場へ行って作成します。公証役場がどこにあるかは、日本公証人連合会のサイト(http://www.koshonin.gr.jp/list/)で調べられます。

公証役場では、遺言者が公証人に遺言の内容を口頭で伝え、公証人がそれを書き取って遺言書を作成し、遺言者と証人に読み聞かせます。その内容を承認した遺言者と証人は、署名・押印します。

遺言者が口をきけない人の場合は、筆記によって口述に代えることができ、耳が聞こえない人の場合は、通訳人の通訳または閲覧を読み聞かせに代えることができます。

遺言者が病気などで外出できない場合は、公証人に病院や自宅へ来てもらうこともできます(手数料・公証人の日当・交通費等がかかります)。

認知症の高齢者が増えたことによって、遺言の内容に不満を持つ相続人が「遺言を作成したとき遺言者は認知症だったので遺言は無効だ」と主張してトラブルになるケースも見られますが、公正証書遺言は、公証人が依頼者に法的な意思能力があると判断した上で作成するので、こうしたトラブルを防ぐことができます。

公正証書遺言を作成するにあたっては、事前に推定相続人(相続人になると見込まれる人)が誰かということと遺産となる財産を調べて、誰に何を相続させるかを決めておきます。

財産については概算の評価額が必要なので、不動産や自社株などはあらかじめ税理士に依頼して金額を出してもらいましょう。

公正証書遺言を作成するときには以下のものが必要です。

◎遺言者の本人確認資料(印鑑登録確認証、運転免許証など)
◎遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本
◎不動産の登記事項証明書と固定資産税評価証明書または固定資産税通知書
◎証人の名前、住所、生年月日、職業の記載したもの

(3) 公正証書遺言作成には手数料がかかる

自筆証書遺言は、いつでも思い立ったときにどこででも書けるのに対して、公正証書遺言を作成するためには公証役場へ行く手間と時間がかかります。

また、証人も2人必要です。証人には、知人・友人のほか、税理士・弁護士・司法書士・ファイナシャルプランナーなどの専門家に頼むこともできます。

未成年者や推定相続人、受遺者(遺言で財産をもらう見込みの人)や、その人たちの配偶者・直系血族は証人になることができません。証人が見つからないときは、相続の相談を受けている専門家や公証役場に相談するとよいでしょう。
 
公証人には守秘義務があるので遺言の内容が漏れる心配はありません。証人も信頼できる人を選ぶことが大切です。

公正証書遺言を作成するには手数料がかかります。金額は、遺言によって相続・遺贈する金額に応じて決まり、例えば、5000万円だと2万9000円、1億円だと4万3000円などとなっています。

公正証書遺言を作成したら、どこの公証役場に遺言があるかを周囲の人に伝えておくとよいでしょう。

遺言者が亡くなったあと、どの公証役場に遺言があるのかわからなくても、法定相続人や遺言執行者であればどこの公証役場からでも遺言検索システムで調べることができます。

(4) 公正証書遺言の記載例

(4) 公正証書遺言の記載例【相続広場】