06 不動産の相続対策 ツイート シェア

06-07 小規模宅地の評価減の活用

(1)二世帯住宅を共有登記

親の戸建住宅の土地に親子で二世帯住宅を建てて住む場合、以前は玄関が別々で家の内部で行き来ができない完全分離型の二世帯住宅に対しては、独立した家屋と判断されて同居とされなかったので特例が適用できませんでした。

しかし、2014年からは、完全分離型の二世帯住宅であっても、建物の構造を問わずに同居とみなされるようになり、特例の適用ができます。申告期限まで継続して住み続けて所有するという要件は、一般的な同居の親族と同じです。

注意してもらいたいのは、建物を親子共有の登記をすることです。共有登記にすると土地の全部に特例が適用されます。

建物に親と子の所有部分を区分登記すると、子の持分割合が親の所有する土地にも適用されるので、子ども世帯の持ち分に相当する土地は「相続開始直前において被相続人の居住していた宅地」とみなされず、親の持ち分に相当する土地の部分にしか特例は適用できません。

マンションの場合には敷地権があるために、建物と土地が一体となって取扱われます。そのために共有登記はできますが、区分所有登記はできません。

(2)賃貸併用住宅の評価

老後資金にゆとりができ、相続税対策に効果があるということで、自宅のある土地に賃貸併用住宅を建てることも注目されています。

賃貸部分に相当する土地は、貸家建付地として自用地よりも相続時の評価額が軽減されますし、さらに小規模宅地等の特例を適用して、貸付事業用の宅地等は200㎡まで50%の評価減が適用されます。

その場合、賃貸部分に相当する土地と自宅部分に相当する土地は、利用割合に応じて調整して特例を使うことができます。

別居の親族で持ち家のある人が相続する場合、親の居住用の宅地部分に特例の適用ができませんが、その場合でも賃貸併用住宅の貸付事業用の宅地部分は特例が適用できます。

賃貸併用住宅を建てる場合は、建築費を支出するために現金が賃貸不動産に置き換わります。その賃貸用不動産の財産評価が減少します。それと同時に不動産収入が入るので、老後のゆとり資金として活用できます。

借入資金で賃貸併用住宅を建てて、家賃収入を借入返済にあてる計画の場合は、空室率の増加や市場の状況による家賃低下も考慮して、慎重な資金計画が必要です。

(3)老人ホームに入居すると

以前は、親が終身利用権付きの老人ホームに入居した場合は、施設が生活の拠点となる理由で、空き家となった自宅のある土地は、「相続開始直前において被相続人の居住していた宅地」ではないとして、特例が適用されないこともありました。

それが2014年1月からは、親が老人ホームに入り所有権や終身利用権を取得しても、一定の要件を満たせば相続時に小規模宅地等の特例が使えるようになりました。

特例を受ける要件は、相続開始時に要支援または要介護の認定を受けていることと(入所時でなくても大丈夫)、相続開始時点で自宅を賃貸などに提供していないことです。

「介護を受ける必要があって介護施設に入所する場合は、病気治療のために病院に入院しているのと同じ状態で、生活の拠点は自宅にある」と判断することになり、特例の適用が受けられるようになりました。

特例の適用対象となる介護施設の種類も拡大され、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅なども特例の対象となります。

被相続人が住んでいない自宅に、以前から同居している親族が住み続けるのは問題ありませんが、被相続人と生計を一にする親族以外の人が新たに住み始めたときは、特例が適用されないことになります。