08 知っておきたいシニアのマネー 医療と介護に備える ツイート シェア

08-02 シニアの医療保険

(1)民間の医療保険は?

シニアにとって老後にかかる医療費は気になるところですが、公的医療保険制度によって自己負担額は抑えられているので、それほど心配する必要はないでしょう。
とはいえ、病気やケガで入院した場合、公的医療保険ではカバーされない負担も生じます。それに備える方法の一つが、民間の医療保険への加入です。

生命保険文化センターの2015年の調査では、医療保険に加入している世帯は90%を超えています。とはいえ、加入している人が必ずしも保障内容を把握しているとは限りません。自分がどんな保険に加入していて、どんなときに保険金・給付金が受け取れるかをしっかり確認しておきましょう。

民間の医療保険は基本的に
・「入院したら1日あたりいくら」という形で入院給付金が支払われる入院保障
・「所定の手術を受けたらいくら」という形で手術給付金が支払われる手術保障
がベースになっていて、それに、さまざまな特約がセットされています。

医療保険は単独で加入するほかに、終身保険や個人年金保険などに「疾病入院特約」「災害入院特約」が付加されていて、それによって入院保障や手術保障などが得られているケースもあります(生命保険でいう「災害」は「ケガ」のことです)。

(2)保障内容を確認?

まず、医療保険に加入しているか、終身保険などに医療に関する特約がついているかをチェックしましょう。医療保険や特約がある場合は、その内容を確認します。確認すべき項目には次のようなものがあります。

・保障期間:保障がいつまで続くか。
 「終身」なら一生涯保障されますが、75歳まで、80歳までなどの場合もあります。
・入院日額:1入院あたりいくら支払われるか。
 5000円、1万円、2万円など。
・給付開始日:入院給付金は入院何日目から支払われるか
 多くの場合「2日以上入院したとき1日目から」あるいは「入院1日目から」(日帰り入院も対象となる)ですが、中には「5日以上入院した場合に5日目から」などの場合もあります。
・1回あたりの給付日数:1回の入院で何日間支払われるか
 60日が主流ですが、120日、180日などの場合もあります。
・通算給付日数:通算で給付金が何日分支払われるか
 1095日あるいは1000日が多くなっています。
・どんな特約がついているか
 「女性疾病特約」「三大疾病特約」「生活習慣病特約」「がん特約」など。
 保険は自分で請求しないと給付金が受け取れません。どんな特約がついていて、どういうときに給付金が受け取れるかを知っておくことが大切です。

(3)保障の見直しを?

病気やケガでの入院が増える可能性の高いシニアにとって、医療保険や特約があれば心強いでしょう。ただ、保障が厚すぎると保険料が高くなって家計を圧迫します。

よくあるのは、複数の医療保険に加入していたり、医療特約と医療保険の両方があったりして保障が重複しているケースです。入院給付金の額を合計してみて、1万円を超えるようだったら、保障額を下げたりいずれかを解約したりすることも考えましょう。

医療保険・特約が1つでも、やはり入院日額が1万円以上だと保障が多すぎると考えられます。保険会社に連絡して保障額を下げれば、保険料の負担が小さくなります。

(4)新規に加入する?

医療保険や特約がない場合、あるいは加入している医療保険・特約の保障が75歳、80歳などで切れる場合はどうしたらいいでしょうか。選択肢は2つあります。1つは新規に医療保険に加入する方法、もう1つは貯蓄で医療に備える方法です。

新規に終身の医療保険に加入すれば安心が得られます。ただし、保険は加入時の年齢が高いほど保険料が高くなります。実際の保険商品で
「入院日額5000円、1入院当たりの支払日数60日」
の場合の保険料を見てみると、比較的保険料が安い保険でも、毎月の保険料は
・65歳 男性:5500~6000円   女性:4000~5000円
・75歳 男性:7500~8500円   女性:7000~8000円

などとなっています。
仮に月6000円の保険料を65歳から95歳までの30年間払うとすると、その総額は
 6000円×12カ月×30年=216万円
となります。

シニアの場合、持病がある、通院中、服薬中など、健康上の理由で保険に加入できないことがあります。健康に問題があっても加入できる医療保険もありますが、保険料がかなり割高です。

ネットの保険料比較サイトなどで保険料の試算ができるので、今加入するとしたら保険料がいくらかを確認して、無理なく払えそうであれば新規加入してもよいでしょう。

(5)貯蓄で備える?

保険がなくても貯蓄が十分あれば医療費の負担に備えることができます。

厚生労働省の調査では、1回あたりの入院日数は年々減ってきていて、最新のデータでは65歳以上が41.7日、75歳以上は47.6日となっています。入院日数が突出して多い精神疾患を含むため実際よりかなり長くなっていますが、1日5000円の入院給付金を50日間受け取るとすると合計で25万円ですから、25万円あれば入院日額5000円の医療保険に加入したのと同じ効果が得られるわけです。

1回50日の入院を5回したとしても、25万円×5回=125万円なので、この程度の貯蓄があれば、医療保険はなくても大丈夫と考えることができます。

保険と貯蓄を比べた場合、保険は入院や手術などでしか給付金が受け取れないのに対して、貯蓄なら入院せずに通院のみで治療する場合にも備えられ、入院しなかった場合は趣味や旅行、介護などどんな目的でも使うことができます。

こうしたことを踏まえ、まず自分や家族の加入している医療保険・特約の内容をチェックし、必要があれば保障を見直しましょう。その際、貯蓄で備えることも検討するとよいでしょう。

(5)貯蓄で備える?【相続広場】