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08-03 最近聞く先進医療とは?

(1)保険診療以外は全額自己負担?

日本では、すべての人が公的医療保険に加入していて、病気やケガで医療機関を受診した場合、自己負担額はかかった医療費の1~3割です。さらに、1カ月の自己負担額には上限があり、それを超えて支払った部分は「高額療養費」として払い戻しが受けられます。

このような自己負担額を抑える仕組みの対象となるのは、安全性と有効性が認められて公的医療保険が適用される、いわゆる「保険がきく」治療です。医療機関を受診したとき、通常は保険治療を受けることになりますが、中には日本で承認されていない治療法や薬を使った「自由診療」を患者が希望するケースもあります。

自由診療には公的医療保険が適用されないため、費用は全額自己負担となります。また、保険診療と自由診療を併用する場合は、自由診療の部分だけでなく、保険診療の部分も全額自己負担になってしまいます。

ただし例外があり、その1つが「先進医療」です。先進医療は自由診療なので、先進医療にかかる費用は全額自己負担となりますが、それと併用する診察・検査・投薬・注射・入院などの保険診療の部分は自己負担割合が通常どおり1~3割となります。
(1)保険診療以外は全額自己負担?【相続広場】

(2)先進医療とは?

では、先進医療とはいったいどんなものなのでしょうか。
簡単にいうと、新しい医療技術のうち、公的医療保険の対象とするかどうか検討中のもの。その数は現在約100種類あります。

先進医療にかかる費用は、その種類によって数千円から数百万円まで幅があります。厚生労働省の資料によると、2015年7月から2016年6月30日に実施された先進医療のうち、最も件数が多かったのが白内障の治療である「焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」で、約1万1000件。1件あたりの費用の平均は約55万円となっています。

1件あたりの費用が高額なのが、がんなどに対する陽子線治療と重粒子線治療です。陽子線治療は年間約2000件行われ、1件当たりの費用は約276万円、重粒子線治療は年間約1800件で、1件当たりの費用は約310万円となっています。

(3)特約か貯蓄で備え?

こうした先進医療の費用負担に備えるのが、医療保険に付加する「先進医療特約」です。先進医療を受けたとき、その費用の実費が給付金として支払われます。給付金額の上限は1000~2000万円というケースが多く、重粒子線治療を受けたとしても十分にまかなえます。

先進医療特約の特約保険料は、年齢・性別を問わず月額が数百円というのが一般的です。保険料が安いので、付加しておけば安心です。今加入している医療保険に特約がついていなくても、あとから付加できる場合があります。

加入している医療保険には先進医療特約がつけられないからといって、解約して先進医療特約付きの保険に入り直すと、年齢が上がっているぶん保険料が高くなってしまいます。健康状態によっては、新規の加入ができない可能性もあります。

その場合の選択肢は2つあります。
1つは、先進医療だけを保障する保険に加入すること。その場合、保険料は月500円程度です。ただし、加入できる年齢に上限があります。
もう1つは、貯蓄で備えること。先進医療の費用は今のところ最大でも300万円程度なので、それだけの貯蓄があれば備えることが可能です。貯蓄の中から300万円を先進医療への備えとして取り分けておくとよいでしょう。
(3)特約か貯蓄で備え?【相続広場】