09 知っておきたいシニアのマネー 金融商品と資産運用 ツイート シェア

09-02 ファンドラップとは何?

(1)金融機関が提案運用

退職金などの運用で人気が高いのが「ファンドラップ」というサービスです。まとまった資金の運用を、証券会社や銀行などの金融機関が本人に代わって行ってくれるというものです。

ファンドラップの最低投資金額は300万円あるいは500万円というところが多くなっています。金融機関は、顧客1人ひとりの運用目的やリスク許容度に合わせたポートフォリオ(金融商品を組み合わせ)を提案し、顧客がそれに納得したら「投資一任契約」を結び、顧客の資産を提案したポートフォリオ通りに運用します。

ファンドラップで運用に使われるのは、その名のとおり投資信託(ファンド)です。提案されるポートフォリオは、例えば「日本株30%、先進国株20%、日本の債券30%、先進国債券10%、日本の不動産5%、先進国の不動産5%」のように異なる投資先に分散され、そのそれぞれを投資対象とする投資信託が使われます。

運用を始めてしばらくすると、ファンドごとの値上がり・値下がりによって、ポートフォリオの各ファンドの比率が当初とは変わってくるので、それを元に比率に戻す「リバランス」が必要になります。ファンドラップの場合、リバランスは金融機関が定期的に行います。

(2)自己運用が低コスト

ファンドラップなら、金融機関が資産配分を提案し、運用して、リバランスも行うので、利用者は何もする必要がありません。知識や経験がなくても資産が運用できるのがファンドラップの人気の理由でしょう。しかし、ファンドラップについては金融庁が問題点を指摘しています。

一つはコストが高いこと。ファンドラップの各ファンドからは運用にかかるコストとして「信託報酬」が差し引かれ、さらに資産残高に応じて「投資一任報酬」という手数料がかかるため、コストが割高です。コストが高いと、その分、運用成果が押し下げられ、コストを上回る運用ができなかった場合、資産が減ってしまうこともあります。

もう一つは、運用に使われるファンドのラインナップです。ほとんどが、ファンドラップを提供している金融機関の系列の運用会社が運用しているものとなっており、利用者よりも系列会社の利益を優先しているのではないか、という疑問が生じます。実際に各社のファンドラップの中身を見てみると、特に運用が優れているファンドが選ばれているとは限らないようです。だったら、ファンドラップのファンドと同じようなタイプのファンドを自分自身で購入したほうが、コストをかけずに運用できます。

(3)ポートフォリオは無料

「お一人おひとりに合わせて最適なポートフォリオを提案します」というのがファンドラップのうたい文句ですが、これもロボアド(ロボット・アドバイザー)を使えば、誰でも簡単に、しかも無料でできます。

ロボアドというのは、パソコンやスマホでいくつかの簡単な質問に答えると、その人に合ったポートフォリオを提案してくれるサービスで、現在10社以上がサービスを提供しています。提案される金融商品はコストの低いインデックスファンドやETFなので、提案通りに自分で商品を購入すれば、ファンドラップと同様の運用が低コスで可能になります。

その場合、リバランスは自分でしなければなりませんが、年に1回か2回資産の状況をチェックして、バランスが大きく崩れていたときだけ値上がりしているものを売却すればよいので、それほど手間はかかりません。
ロボアドの中には、資金を入金すると提案どおりのポートフォリオで運用してくれるところもあり、この場合、リバランスは自分でする必要はありません。口座管理手数はかかりますが、1年あたり資産額の1%程度なので、ファンドラップより安くおさえられます。

このように見てくると、ファンドラップに大きなメリットはなさそうです。
ロボアドでポートフォリオの提案を受けて、それに合わせて自分自身でネットを使ってインデックスファンドを購入するか、ロボアドで運用までやってもらうようにすれば、金融機関へ出向く必要もありません。

運用の経験がないとつい人任せにしてしまいがちですが、少し知識があれば、自分で運用するのは難しくないし、そのほうが余計なコストがかからず、資産を増やす効果が高まります。大切なお金はぜひ自分自身で運用してください。
(3)ポートフォリオは無料【相続広場】