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09-03 外貨建保険はどんなもの?

(1)銀行が販売に力を?

退職金を受け取ったときや定期預金が満期になったときなどに、銀行が勧めてくる金融商品のひとつが「外貨建て保険」、中でも、保険料を一括払いする「一時払い」の終身保険や個人年金保険です。円建ての一時払い保険もありますが、現在は利回りが低いため、米ドル建てや豪(オーストラリア)ドル建てのものが主流になっています。

銀行は、保険を販売することで、保険会社から販売手数料を得ています。特に外貨建ての保険は手数料が高いため、銀行が熱心に販売しているのです。
しかし、外貨建て保険は仕組みが複雑であり、為替リスクがつきものです。そうした商品の内容を十分に理解しないまま顧客が購入させられているケースが多いと見られ、金融庁も問題視しています。

では、外貨建て保険とは、どのようなものなのでしょうか。

(2)仕組みが複雑?

外貨建て保険の多くは一時払い保険料が100万円以上で、それが外貨で運用されます。終身保険の場合は契約者が亡くなったときに、支払った保険料と同額かそれを上回る死亡保険金、途中で解約すると解約返戻金が支払われます。個人年金の場合は、一定の運用期間を経たあとに、運用された資金が年金として支払われます。

死亡保険金や年金は契約時に決められた額が保証されていますが、それは「外貨ベース」での話。契約時より受取時のほうが円高になっていたら、保険金や年金を円に戻したとき為替の差損が生じて、受取額が想定より少なくなる「為替リスク」があります。

外貨建て保険の説明資料などに記載されている「積立利率」は、預金金利などに比べるととても高いのですが、保険商品の場合、そこから保険のコストなどが差し引かれるため、実際の運用利回りはこれを下回ります。また、解約返戻金の額は運用状況によって変動するうえ、契約から一定年数が経過する前に解約すると、契約後の経過年数に応じて返戻金額がカットされ、受取額は払い込んだ保険料より少なくなります。

(3)高いコスト?

外貨建て保険は、支払った保険料の一部が保険契約の締結・維持、死亡保障などの費用に充てられ、支払った保険料から差し引かれます。商品によっては、保険料を一時払いした時点で数パーセントの手数料が差し引かれるものもあり、その場合、100万円の保険料を払い込んでも、外貨で運用される金額は100万円を下回ることになります。

さらに、契約するとき、円で払い込んだ保険料を外貨に換えるのに為替手数料がかかり、受け取った保険金や解約返戻金、年金を外貨から円に換えるのにも為替手数料がかかります。死亡保険金、解約返戻金、年金の受取時に1パーセント程度の手数料が差し引かれる商品もあるなど、外貨建て保険は全般に顧客が負担するコストが非常に高くなっています。

(4)金融庁も問題視?

銀行が外貨建て保険を販売するとき、為替リスクや、実質的な利回り、コストなどを十分に説明せず、顧客が誤解・誤認していて、あとになって「知らなかった」「こんなはずではなかった」となるケースも見られます。

金融商品の購入は顧客の自己責任で行わなければなりませんが、外貨建て保険はいろいろなタイプのものがあり、商品によって仕組みが少しずつ異なっているため、顧客が十分理解するのは難しいといえます。仕組みの複雑な商品を、顧客に十分に理解してもらわないまま販売するのは「顧客本位」とはいえず、銀行の販売体制に問題があるといってよいでしょう。

外貨建て保険は外国債券と投資信託と死亡保険がセットになったものですが、この3つを別々に購入したほうが、シンプルでわかりやすく、コストも大幅に安くなります。それを説明せず、複雑な商品に仕立てて高い手数料を取るのは、「顧客のニーズよりも、製造・販売業者の論理で金融サービスを提供しているのではないかとの見方もできる」と、金融庁も厳しく指摘しています。

もし銀行で外貨建ての保険を勧められたら、こうしたことをぜひ思い出してください。

(4)金融庁も問題視?【相続広場】