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09-04 「トンチン年金」で長生きリスクに備えられる?

(1)長生きすると得?

人生100年時代を迎え、保険の役割も変わってきています。
かつては、亡くなったときに備える「死亡保険」が主流でしたが、今は長生きしたときにお金が不足するリスクに備える「年金保険」のニーズが高まっています。
とはいえ、これまでの個人年金保険は予定利率が下がり、終身年金(亡くなるまで年金が受け取れる年金保険)の多くは販売中止になっています。

そんな中、新しいタイプの年金保険として登場したのが「トンチン年金」あるいは「トンチン保険」と呼ばれる年金保険です。「トンチン」というのは、「先に亡くなった人の払った保険料を長生きした人に回す」という仕組みを考案した17世紀イタリアの銀行家・ロレンツォ・トンティに由来しています。

日本では現在、4つの保険会社がトンチン年金を扱っています。どんなものなのかを見てみましょう。

(2)モトをとるには90歳後

年金保険は、契約者が保険料を一定の期間支払い、それを保険会社が運用して年金原資とし、契約者は60歳あるいは65歳から、一定期間あるいは亡くなるまで年金を受け取る保険です。保険料払込期間中に亡くなった場合には死亡保険金、途中で解約したときは解約返戻金が受け取れます。

トンチン年金は、死亡保険金や解約返戻金を低く抑える代わりに、年金額を多くしたもので、長生きするほど受け取る年金の総額が増える仕組みです。

ある保険会社の商品は次のようになっています。
・50歳で契約し、50歳から69歳まで保険料を支払う。
・保険料払込み期間中に亡くなった場合の死亡保険金や解約した場合の解約返戻金は、それまでに払い込んだ保険料の総額を下回る。
・70歳から亡くなるまで、契約時に決められた年金額が受け取れる。
・74歳までは死亡保険金があるが、75歳以降に亡くなっても死亡保険金は支払われない。
・50歳のとき年金額60万円で契約すると、毎月の保険料は
  男性:5万790円
  女性:6万2526円

 受け取る年金の総額が払い込んだ保険料総額を超える「損益分岐点」を計算してみると、
  男性:90歳
  女性:95歳
 となります。

他社の商品も契約できるのは50歳からで、損益分岐点は男性88~90歳、女性94~95歳程度と、ほぼ同じような内容になっています。

(3)どんな人に向く?

 トンチン年金は、90歳あるいは95歳まで年金を受け取ると「モトが取れる」ことになるので、それより長生きする自信があり、75歳以降に死亡保障が必要ない人に向いているといえます。長生きする自信がなくても、「モトはとれないかもしれないが、想定外に長生きしたときに備えたい」という場合は、トンチン年金が選択肢の1つとなるでしょう。
 高齢になると自分で資産を取り崩していくのは難しくなるので、決まった年金額が自動的に口座に振り込まれる年金保険は使い勝手がよいかもしれません。

 とはいえ、トンチン年金は保険料がかなり高いのが難点。働いて収入を得ているあいだはよいとしても、リタイアした後に保険料を払っていけるかどうかが問題です。公的年金や企業年金の額、リタイア後の支出の見込み、リタイア時の金融資産額などを試算したうえで、保険料が払い続けられるかどうかを確認する必要があります。

 長生きリスクに備えるには、公的年金を繰下げ受給して年金額を増やす、税制優遇のあるつみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用して資産を運用するなど、いくつかの方法があります。それらも検討したうえで、トンチン年金を利用するかどうかを考えるとよいでしょう。

(3)どんな人に向く?【相続広場】