09 知っておきたいシニアのマネー 金融商品と資産運用 ツイート シェア

09-05 リタイア後の資産運用は?

(1)リタイア後はリスクを取りすぎない

日本では平均寿命が年々延びていて、昔に比べると誰もが長生きできる時代になったといえます。それはそれで喜ばしいことなのですが、長生きすることによって生きている間に資金不足に陥る“長生きリスク”も心配されるようになってきました。

長生きリスクに備える方法の一つが資産運用です。現在のような低金利の状況だと預金ではお金を増やすことができないので、資産の一部を預金以外の金融商品で運用して増やし、“資産寿命”を延ばすのです。

とはいえ、預金以外の金融商品には値動きがあり、値動きの大きな(=リスクの高い)金融商品で運用したり、運用に回す金額が多すぎたりすると、大切な老後資金を減らしてしまうかもしれません。リタイア後の資産運用はリスクを取りすぎないことが最も大切です。

(2)債券中心の運用を

リスクを取りすぎない運用とはどのようなものでしょうか。

金融商品でいうと、投資信託が中心になるでしょう。株や債券などに幅広く分散投資することで値動きが抑えられているからです。投資信託の中でも株だけに投資するものより、債券、あるいは債券と株の両方に投資するもののほうが値動きが少なく、リタイア後の資産運用に向いています。

例えば、先進国の格付けの高い(=安全性の高い)債券で運用するファンドや、日本と世界の株と債券に幅広く分散投資するバランス型ファンドなどが候補になるでしょう。

ただ、実際にはシニア層がリスクの高い投資信託を保有していることがよくあります。例えば、新興国の株に投資するタイプや、格付けの低い(=安全性の低い)ハイ・イールド債という債券に投資するタイプなどです。これらは、将来の大きな値上がりや高い分配金が期待できますが、そのぶんリスクも高く、大きく値下がりする可能性があります。こうしたファンドを購入して大切な老後資産を減らしてしまっては取り返しがつきません。

「大きな値上がり」や「高い分配金」をねらった運用は、リタイア後には向かないと心得ましょう。

(3)分配回数は少ないほうがよい

シニア向けの投資信託としては、毎月分配金を支払うタイプのファンドがこれまでの主流でした。収入が年金だけになった人にとって、毎月支払われる分配金がお小遣い代わりに使えることから、大きな人気を集めたのです。最近は、公的年金の振り込みのない奇数月に分配金を支払う隔月分配型のファンドも出てきています。

知っておきたいのは、ファンドの保有者に分配金を支払うとファンドの資産が減り、ファンドの時価である基準価格も下がるということです。資産が減ると運用効率が下がって資産があまり増えなくなります。また、基準価額が下がると、そのファンドを売却したとき損失が生じます。

したがって、資産を増やして資産寿命を延ばすのが目的であれば、運用効率の高い年1回分配あるいは年2回分配のもののほうが適しています。

(4)取り崩し方と運用のゴールを考える

リタイア後の支出には、生活費のほかに趣味や旅行にかかるお金、自宅のメンテナンスやリフォーム費用などがあり、それらが年金でまかなえなければ、預金を取り崩したり投資信託を解約したりして使うことになります。

その際、預金のみから取り崩していくと、資産全体に占める投資信託の比率が高くなっていき、リスクの取りすぎになってしまいます。かといって、投資信託から先に取り崩すと、十分な運用ができなくなります。ですから、預金と投資信託からバランスよく取り崩していくことを心がけましょう。

リタイア後いつまで運用を続けるかというゴールを決めておくことも大切です。年齢が高くなるほど、投資信託などの比率を小さくしていくのが望ましく、一定年齢になったら安全を期して資産をすべて現金・預金にしてかまいません。たとえば、75歳あるいは80歳まで運用すると決めて、投資信託はそのときに残高がゼロになるように取り崩していく、あるいは、その年齢になったらすべて売却して預金に換えるといったことが考えられます。

リタイア後の運用は、資産全体に対して投資信託の比率をどのくらいにするか、どのようなファンドを利用するか、どのように資産を取り崩していくか、いつまで運用するかなど、検討すべきことがたくさんあります。金融商品を購入する前に、これらについて考えて、しっかりした運用プランを立てるようにしてください。
(4)取り崩し方と運用のゴールを考える【相続広場】