01 相続の基本知識 ツイート シェア

01-04 単純承認か、相続放棄か

(1)相続は負債も引き継ぐ

相続人が遺産を相続する法的効果は、被相続人の一切の権利義務を引継ぐことを意味します。つまりプラスの財産のみでなく、マイナスの財産である負債も引継ぐことです。

被相続人(亡くなった人)が遺した財産には、不動産や金融資産などのプラスの財産と、借入金などのマイナスの財産があります。借入金があってもプラスの財産の方が多い場合には、正味財産がプラスなのでそのまま相続できます。

反対に、被相続人がプラスの財産を超えるマイナスの借金を遺した場合には、相続人は負債返済のために苦労することになります。

そこで相続の仕方には3つの方法があります。すべての財産と債務を引継ぐ一般的な「単純承認」、一切の財産と債務を引継がない「相続放棄」、負債を差し引いた後の純財産がある場合に引き継ぐ「限定承認」です。

(2)一般的な単純承認

プラスの財産もマイナスの財産も、全財産を無条件に引き継ぐ相続の方法が「単純承認」です。単純承認の場合は、プラスとマイナスの財産の内、どの財産を誰がいくら引き継ぐか協議します。マイナスの財産を引き継いだ人は、その返済義務を負うことになります。

単純承認は一般的な相続のことで、何も手続きをしなければ単純承認で相続することになります。
(2)一般的な単純承認【相続広場】

(3)相続放棄は3カ月以内

プラスの財産もマイナスの財産も、一切の財産を引き継がないと決めるのが「相続放棄」です。プラスの相続財産が少なく、マイナスの財産のほうが大きい場合は、相続放棄の手続きを検討しましょう。

そのまま相続すると、相続人が借金を返済する義務を負わなくてはならなくなります。

相続放棄を行うと、一切の相続財産を受取る権利を失います。マイナスの財産だけ放棄して、プラスの財産を相続することはできません。

相続放棄をした相続人は「始めから相続人でなかった」とみなされて、相続に関する一切の権利義務を失います。

相続放棄は、相続人全員でも、相続人の1人でも選択することができます。相続放棄をする場合は、相続の開始(被相続人の死亡)があったことを知ったときから3カ月以内に家庭裁判所で申し立てをしなければなりません。

期限を過ぎると相続放棄はできなくなります。また一度放棄をしたら、取り消すことはできません。

(4)限定承認は全員で行う

「限定承認」は、被相続人が残したプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産の債務を引き受けるという意思表示です。プラスの財産を超える額の債務があっても、返済をしなくて済みます。

限定承認を選ぶ場合も、3カ月以内に家庭裁判所で申し立てをしないといけません。プラスの財産とマイナスの財産、どちらが多いのかわからない場合には、限定承認を選択したほうがいいこともあります。

限定承認は、一部の相続人だけでも選べるようにしておくと権利関係が複雑になるため、相続人全員で行わないといけません。意見が食い違うと選択できないので、相続人同士の話し合いが必要になります。

3カ月以内に何の手続きもしなければ、自動的に単純承認したものとみなされます。その後に借入金が見つかっても、相続人が返済しなければなりません。

3カ月以内に相続放棄、限定承認の決定ができない場合は、期限前に家庭裁判所へ熟慮期間の延長を申し出ると、さらに3カ月の猶予期間が認められます。