01 相続の基本知識 ツイート シェア

01-03 遺産分割の方法

(1) 遺言書か、法定相続か

(参照:03-01 遺言書の書き方と遺留分
民法には、法定相続人とその取得割合が定められています。しかし、被相続人が生前に遺言書で遺産の分け方を指定していた場合は、遺言書が優先します。
(遺言書があっても、相続人全員の合意がある場合には、遺言書と異なる遺産分割協議書を作成することができます)。

遺言書がない場合は、法定相続人の全員の協議で決定するのが原則です。民法には「法定相続分」が定められています。しかしこの場合にも、法定相続人の全員の合意があれば、民法と異なる遺産分割を合意できます。

(2) 民法の「法定相続分」

(参照:03-01 遺言書の書き方と遺留分
相続人が配偶者と子の場合、相続分は、配偶者が1/2、子が1/2となります。子が2人以上いる場合は、子の持分1/2を子の数で均等に分けます。例えば、配偶者と子2人が相続人の場合には、配偶者が1/2、子1人につきそれぞれ1/4(1/2x1/2)となります。

配偶者と父母が相続人の場合は、配偶者が2/3、父母が1/3です。父母とも存命であれば、それぞれ1/6ずつ(1/3×1/2)となります。

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4で、兄弟姉妹が2人以上いる場合は均等に分けます。

配偶者がいない場合に、相続人が子のみの場合には、子が全額取得します。子が複数の場合には均等に分けます。

相続人が父母のみの場合には、生存している父母が全額を取得します。相続人が兄弟姉妹のみの場合には、兄弟姉妹が均等に分けます。
(2) 民法の「法定相続分」【相続広場】

(3) 分割協書を作成

遺産を分割するとき、遺産がほとんど金融資産であれば、法定相続分に従って分割することが容易です。ところが実際の相続財産には、自宅不動産、賃貸不動産、自社株などが含まれており、そのような財産は簡単に換金できず、分割するのが難しいといえます。

その場合には、法定相続人全員が話し合って、誰が何を相続するかを協議して決めます。この話し合いを「遺産分割協議」といいます(相続を放棄した人は、遺産分割協議に参加することはできません)。
 
全員が合意に達したら、その結果を「遺産分割協議書」に記載し、法定相続人全員が実印を押印します。書面にしておくことで、あとでトラブルになるのを防ぐことができます。この遺産分割協議書は、税務申告書に添付するほか、不動産の名義変更をしたり、預貯金を引き出したりするときにも必要です。

遺産分割協議書には決まった書式はありませんが、誰が何を相続するかを具体的に書きます。また、不動産の登記簿上の所在地、預貯金は金融機関名や預金の種類・口座番号など、遺産が明確に特定できるように記載します。

遺産分割協議書を作成したあとで記載されていなかった財産が見つかった場合に備えて、「本協議書に記載のない財産や後日判明した財産については、相続人○○がこれを取得する」などの一文を入れておくとよいでしょう。

(4)寄与分と特別受益

遺産分割協議の際に、被相続人から生前贈与を受けた相続人がいる場合には、「特別受益」として法定相続分から減額します。被相続人の身体介護をした人がいた場合には、合意により「寄与分」相当額を加算します。

特別受益とは、特定の相続人が留学、結婚、住宅取得等の際に、被相続人から受けた金銭的援助のことです。援助額は相続財産に加算して遺産額を算出し、各相続人の相続割合を再計算します。
遺産分割にあたって、特別受益を受けた人については、その分を相続分から控除します。

寄与分は、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人がいたり、仕事を辞めて被相続人の介護に専念したことで介護費用が少なくすんだりした場合などに、その相続人の相続分にプラスされます。

寄与額をいくらと換算するかについては、他の相続人の合意が必要ですから、寄与貢献した人はその記録を残しておくことをお勧めします。

(5) 未成年者や行方不明者

遺産分割協議は、法定相続人全員で行わなければなりません。相続人に未成年者がいる場合には、親などが代理人として協議に参加します。

ただし、親自身も相続人である場合は利害関係が対立することになるので、家庭裁判所に申し立てて「特別代理人」を選任してもらいます。未成年の子が2人以上いるときは、それぞれに特別代理人が必要です。

認知症などで判断能力が衰えた人が相続人の場合は、成年後見制度を利用して家庭裁判所に成年後見人を選任してもらいます。

相続人に行方不明の人がいて遺産分割協議ができないケースもあります。行方不明になって7年以上経過している場合は、家庭裁判所に申し立てて失踪宣告の審判を受ければ、その人は死亡したとみなされます。7年以上経過していない場合は、家庭裁判所に「不在財産管理人」を選任してもらいます。

特別代理人や後見人、不在財産管理人は、相続人でない親族がなれるほか、弁護士や司法書士など専門家に依頼することもできます。