12 相続税Q&A 応用編 ツイート シェア

12-02 寄与分は?

(1)寄与分とは?

 共同相続人の中に、被相続人の財産の維持・増加や、被相続人の療養看護等、特別の貢献をしてきた者がいる場合には、その貢献度を考慮しないで遺産分割をすると不公平になります。従って、その貢献をした相続人にその貢献度に見合った財産を相続分より多く取得する権利が認められています。これを寄与分といいます。

(2) 寄与分の内容は?

① 寄与分権利者
 寄与分が認められるのは共同相続人に限られています。従って、被相続人の内縁の妻や長男の嫁などは、特別の寄与があったとしても、寄与分は認められません。

②要件
 寄与分が認められるのはあくまでも特別の寄与があった場合であり、民法では以下の要件が定められています。

・被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付がなされた場合
被相続人の事業を長年にわたって無給またはかなり低額な報酬しか受け取っていなかった場合などが該当します。適正な報酬を受け取っていた場合には認められなかったケースもあります。
・被相続人の療養看護その他の方法による財産の維持または増加
娘が仕事を辞めて親と同居した結果、看護費用の支払いが減った場合、長男が親の治療費等を負担していた場合などが該当します。単に親と同居して面倒を見ていたというだけでは特別の寄与とは認められません。

③手続き
 原則として、寄与分は共同相続人間の協議により決定されます。協議が成立しないときは、 家庭裁判所に調停や審判を申立て、その額を決めてもらうことになります。

(3) 寄与分の計算方法?

①計算方法
 寄与分が認められた場合は、被相続人の相続時の遺産から寄与分の価額を控除した額を各相続人の相続分に基づいて按分し、寄与分権利者については、その額に寄与分の価額を加算します。

寄与分権利者の具体的な相続分は以下のように計算します。
(ア)相続財産=被相続人の相続時の遺産-寄与分の価額
これを各相続人に按分します。
(イ)寄与分権利者の相続分=相続財産×法定相続割合+寄与分の価額

②具体例
 相続人が4人(妻、長男、次男、長女)、被相続人の相続時の遺産が170,000,000円、長男の寄与分の価額が20,000,000円の場合、各相続人の相続分は以下の通りです。

(ア)相続財産 150,000,000円(170,000,000円-20,000,000円)
(イ)各相続人の具体的相続分
妻   75,000,000円(150,000,000円×1/2)
長男  45,000,000円(150,000,000円×1/2×1/3+20,000,000円)
次男  25,000,000円(150,000,000円×1/2×1/3)
長女  25,000,000円(150,000,000円×1/2×1/3)