11 相続税Q&A 基礎編 その2 ツイート シェア

11-04 配偶者の税額軽減は?

(1)配偶者の軽減措置?

配偶者の老後の生活資金の確保、相続財産の維持・形成への配偶者の貢献等を考慮して、相続税の軽減措置があります。

(2)軽減措置の内容は?

①軽減額
 配偶者が相続した財産の課税価格のうち、次のいずれか大きい金額までは、相続税がかかりません。
・課税価格の合計額のうち、配偶者の法定相続分相当額
・1億6千万円
 
②配偶者の範囲
 配偶者は、その被相続人との婚姻について、婚姻の届出をしている者に限られます。従って、事実上婚姻関係と同様の事情にあっても婚姻の届出をしていない、いわゆる内縁関係にある者は含まれません。

③対象となる財産
税額軽減の対象となるのは、相続税の申告期限までに分割されて配偶者が実際に取得した財産に限られます。従って、相続税の申告期限までに分割されていない財産は対象になりません。また、仮装または隠蔽された財産も対象にはなりません。

ただし、相続税の申告期限までに分割されなかった財産については、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限から3年以内に未分割の財産を分割した時は、税額軽減の対象になります。

(3)二次相続を考え分割

 配偶者の税額軽減があるため、一次相続の時に配偶者が相続財産を多く取得して、相続税が少なくなるように遺産分割を行うことが多いですが、二次相続の時の相続税負担が重くなることによって、必ずしも有利とはいえない場合もありますので、注意が必要です。

 相続人が配偶者(母)と子供2人(長女、次女)で、相続財産が1億5千万円の場合を見てみましょう。

①一次相続で配偶者がすべてを取得した場合
一次相続二次相続個人分合計
取得財産額150,000,000150,000,000
相続税額00
長女取得財産額075,000,00075,000,000
相続税額09,200,0009,200,000
次女取得財産額075,000,00075,000,000
相続税額09,200,0009,200,000
家族分合計取得財産額150,000,000150,000,000
相続税額018,400,00018,400,000


②一次相続で各相続人が法定相続分を取得した場合
一次相続二次相続個人分合計
取得財産額75,000,00075,000,000
相続税額00
長女取得財産額37,500,00037,500,00037,500,000
相続税額3,737,5001,975,0005,712,500
次女取得財産額37,500,00037,500,00075,000,000
相続税額3,737,5001,975,0005,712,500
家族分合計取得財産額150,000,00075,000,000
相続税額7,475,0003,950,00011,425,000


③結果
 一次相続で配偶者がすべてを取得すると、一次相続では相続税がかからないため、①の方が相続税は少ないですが、二次相続で相続税が多くなるため、一次相続と二次相続合計では6,975,000円(18,400,000円-11,425,000円)多くなってしまいます。

 従って、相続財産の総額や配偶者固有の財産、配偶者の老後の生活資金、家族構成等を総合的に判断し、二次相続の時の相続税を考慮した上で遺産分割を行うことが大事になってきます。