13 贈与税Q&A 基礎編 ツイート シェア

13-04 相続時精算課税制度は?

(1)精算課税制度とは?

 生前贈与時の贈与税負担を軽減し、相続時にその生前贈与財産とその他の相続財産を合計した金額を基に相続税を計算することにより、贈与税と相続税を一体として取り扱う制度を相続時精算課税制度といいます。

(2)制度の条件は?

 相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母(贈与者)から20歳以上の子または孫(受贈者)へ生前贈与を行う場合において、贈与時には贈与財産に対する贈与税を納め、その後に相続が発生した時にその贈与財産とその他の相続財産を合計した価額を基に計算した相続税額から、既に納めた贈与税額を控除することにより、贈与税と相続税を通じた納税を行うものです。

(3)贈与者ごとに選択?

 受贈者は、贈与者ごとにこの制度を選択することが出来ますので、父からの贈与は相続時精算課税制度、母からの贈与は暦年贈与制度を選択することが出来ます。
 この制度を選択した受贈者は、その贈与者からの贈与財産とその他の贈与財産を区別して贈与税の計算をします。

(4)贈与税の計算は?

① 特別控除額
 贈与財産の価額から特別控除額として2,500万円を控除することが出来ます。なお、前年以前に既にこの特別控除額を使用している場合には、2,500万円からその使用した金額を控除した金額が限度となります。

② 税率
 特別控除額2,500万円を超えた部分の金額に対して、一律20%の税率で贈与税が課税されます。従って、贈与財産の合計が2,500万円までは贈与税は課税されません。

③ 具体例
 父からの贈与について相続時精算課税制度を選択し、数年に渡って贈与を受けた場合の贈与税額は以下の通りです。

(ア)1年目(受贈額1,500万円)
  イ. 課税対象額  1,500万円(受贈額)-1,500万円(特別控除額)=0円
  ロ. 贈与税額  課税対象額が0円のため、贈与税は課税されません。
  ハ. 翌年に繰り越される特別控除額  2,500万円-1,500万円=1,000万円
 
(イ)2年目(受贈額800万円)
  イ. 課税対象額  800万円(受贈額)-800万円(特別控除額)=0円
  ロ. 贈与税額  課税対象額が0円のため、贈与税は課税されません。
  ハ. 翌年に繰り越される特別控除額  1,000万円-800万円=200万円

(ウ)3年目(受贈額1,000万円)
  イ. 課税対象額  1,000万円(受贈額)-200万円(特別控除額)=800万円
  ロ. 贈与税額  800万円×20%=160万円
  ハ. 翌年に繰り越される特別控除額 既に特別控除額が2,500万円に達したため0円
  
 ※ 3年目に特別控除額が2,500万円に達したため、4年目以降は、受贈額に対して20%の税率で贈与税が課税されます。

(5)相続税との関係は?

 贈与者の相続発生時に、相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)をその他の相続財産の価額に加算して相続税額を計算します。

 この場合において、既に支払った贈与税額は、相続税額から控除され、控除しきれない金額は還付されます。

(6)デメリットは?

 相続時精算課税制度のメリットとデメリットを簡単にまとめると以下の通りです。

① メリット
・生前贈与を一度に多額に行うことが出来る(早めに財産を子に移転することが出来る。)。
・続時に加算される贈与財産の価額は贈与時の価額のため、自社株など将来値上がりが見込まれる財産の場合はその値上がり部分が節税となる。
・貸不動産等の収益物件を贈与した場合、それ以降の賃料収入等を受贈者に帰属させることが出来る。

② デメリット
・贈与財産が相続時財産に加算されるため、相続財産を減らすことが出来ない。
・自宅等を贈与してしまうと相続時に小規模宅地等の特例を受けることが出来ない。
・一度選択してしまうと撤回することが出来ない(暦年課税に戻ることが出来ない。)。
・不動産取得税(相続の場合は非課税)と登録免許税(相続よりも贈与のほうが税率が高い)がかかる。
・贈与を受けた財産は相続時に物納することが出来ない。